INAIという場所をひらいて
東京の一角に、会員制レストラン INAI を開くまで。準備の日々と、ひらいてから気づいたことを書き留めます。
INAI をひらく前、いちばん長く話し合ったのは「どう迎えるか」ということでした。
料理の構成よりも先に、入り口の暗さ、靴の置き場所、最初のひと声。お客様がお店の扉を開けてから席につくまでの、わずか数十秒のあいだに流れる空気を、何度も確かめました。
紹介というかたち
INAI は紹介制のレストランです。けれどそれは、線を引くためではありません。
既に来てくださっている方が、大切な人を連れてきたくなる場所であること。そのために、わたしたちは紹介という仕組みを選びました。会員の方が「ここは気を遣わずに連れてこられる」と思える店であること。それが、いちばんの基準です。
4つのランク、ひとつの流儀
会員制度は4段階あります。けれど、席に着いてしまえば、どのランクの方も同じように迎えます。
ランクは「来店の頻度や、紹介の責任のかたち」を表すもので、サービスに差があるわけではありません。そう説明すると、多くの方がほっとした表情をされます。
一頭買いという覚悟
INAI では、尾崎牛を一頭単位で仕入れています。
部位の均一なロースだけを切り売りで仕入れる方が、商売としては楽です。それでも一頭を引き受けるのは、その牛が育った時間を、最後まで責任をもって扱いたいから。
普段は出ないような部位が、ある夜のコースにひっそり加わる。そういう「その夜にしかないひと皿」を、静かに重ねていきたいと思っています。
開店から、いまのこと
開いて半年が経ちました。ありがたいことに、紹介から紹介へと、少しずつ輪が広がっています。
これから訪れる方にも、ここで過ごす時間が、また誰かに手紙を書きたくなるようなものになりますように。