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一頭の尾崎牛と向き合うこと

宮崎・尾崎牧場の牛を、一頭単位で扱うということ。部位ごとの表情と、それを献立に仕立てる日々のこと。

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by 本澤杏祐
一頭の尾崎牛と向き合うこと

尾崎牛は、宮崎県の尾崎牧場で育った牛のことを指します。

わたしたちは INAI で、この尾崎牛を一頭単位で仕入れています。ロースだけ、ヒレだけ、という切り売りの仕入れはしません。

一頭買いの、不便さと豊かさ

一頭買いは、率直にいって不便です。

均一な部位だけを扱いたければ、必要な分量だけを卸から仕入れる方が効率が良い。けれど、それでは「この牛は、どの月齢でどう育ったか」という物語が、お皿の上から消えてしまいます。

部位ごとの、まったく違う表情

同じ一頭の牛でも、部位によって味わいはまったく別物です。

  • ロース — 火入れの甘みで主役になる部位
  • ミスジ — 繊維が細かく、薄く引くと舌の上でほどける
  • スネ — 長時間の煮込みでしか見えない、濃い旨味

一頭を預かると、自然と「今日はこの部位が良い」「明日はこちらを寝かせる」という対話が生まれます。

牧場を訪ねるということ

可能なかぎり、料理長と一緒に牧場を訪ねるようにしています。

食材をお皿に乗せる前に、その食材が育った場所の空気を知っている。 それだけで、仕上がりが変わると思うんです。

料理長はそう言います。わたしも、現場でしか見えないものがある、と感じています。

お客様にお出しするとき

コースの献立表に、部位の名前を細かく書くことはしません。

「どこの部位か」より、「どういう火の入り方をしたか、どういう香りが立っているか」をまず感じていただきたい。その説明は、サービスが席で、短く差し上げます。

尾崎牛は、INAI の主役のひとつです。これからも、一頭と向き合い続けます。